日本伝統芸能を通訳ガイドする研修

日時   2010年2月13日(土)

講 師
 主任講師:ランデル洋子
 準講師:松岡明子
 総合講師:ボーディ・フィッシュマン
 専門講師:
  能楽:辰巳満次郎、辰巳和麿、辰巳孝弥、澤田宏司、石黒実都
  狂言:茂山宗彦、オンジェィ ヒーブル、ディモシー メドロック、戸田健太郎、和田晶子、佐賀野鏡
  書道・茶花:守屋實智子、澤田實
 










  2 月13日(土)京都の町家にての「日本伝統芸能を通訳ガイドしよう研修」は、46名の参加者が2組に分かれ、午前中に能と書道、午後に狂言と茶花を体験しました。能楽師の辰巳満次郎氏、狂言師の茂山宗彦氏、平安書道会の澤田實氏に直々にご指導していただき、能と狂言も鑑賞するという贅沢な内容でした。また、すべてネイティブによる英語説明も行ったため、具体的な表現方法などが大変参考になりました。

能の体験では、辰巳先生が入ってこられると、ピンと張り詰めた静謐な空気がみなぎります。「足袋を履くのは左足から」など日本文化における左優先の原則や、手の小指に力を入れる立ち姿勢、すり足や足拍子、しおり(泣く)など厳しく楽しくご指導いただいた後、参加者全員が能面をつけて一連の動作をします。初めて面をつける感動と緊張の中、視界が狭くて右往左往しながらも参加者は能役者になりきりました。そして「船弁慶」の鑑賞では、自ら体験直後なので、一つ一つの動きの意味がよくわかります。先生の圧倒的な存在感、深みのある豊かな声、洗練された動きにすっかり魅せられました。

次に書道の実習です。澤田先生の凛とした書に感嘆し、お手本を見ながら筆を走らせます。先生に朱を入れていただき、一枚、また一枚と書いていると、次第に心が落ち着いてきます。最後に好きな字を色紙に書きました。

その次の茶花では、澤田先生が説明しながらお花を生けられました。簡素で品があり、お花が活き活きとしています。でも自分でやるとなかなか思うようにいきません。参加者は真剣に取り組み、春先にふさわしい可憐な作品が次々とできあがりました。
最後は狂言です。チェコ出身のオンジェイ先生が狂言の魅力について英語で解説された後、茂山先生が狂言の笑いや舞台について、ユーモアたっぷりに実演を交えて話してくださいました。最後にみんなで「大笑い」のやり方を学びました。

まとめは参加者各自によるデモ。今日学んだことを通訳ガイドとしてお客様に説明するトレーニングでした。日本人の精神性の結晶のような伝統文化の数々に触れ、この豊かな文化をきちんと伝えたいと心から思えるものでした。真の専門家ご自身からの体験指導も含まれた内容により、西洋の伝統文化との相違点や共通点、誤解を招きかねないマナーの注意点なども含め、通訳ガイドとして自信を持って正しく興味深く説明するスキルを習得する機会となりました。

アンケート抜粋

  • 日本の伝統芸能のエッセンスを各テーマの専門家(第一人者)より詳しく、体験も含めて学習でき、理解を深めることができました。自信を持って外国人訪日客にお伝えすることができます。
  • 伝統芸能をそのマスターの先生方からお教えいただき、その心を学ぶことができました。能の貴重なお面をかぶらせていただき感動しました。限られた視野からも、動くことの難しさや、その制限の中からこそ生まれる精神性にも思いを馳せることもできました。
  • 書道も具体的な表現を英語で聞く機会があり、参考になりました。また、狂言も、具体的な所作を知ることができ有意義でした。伝統の能の面をつけて基本動作を体験させていただき、なかなか貴重なめったに出来ない体験でした。
  • 能・狂言・書道・茶花と、いずれの分野も一流の先生に直伝にて教授いただく機会があったこと自体、非常にラッキーな経験でした。それぞれの先生方の考えや、芸能・芸術にかける思いや、日本文化・国際交流への思いを聞けたことはさらによい副産物でした。しかも全て英語に翻訳していただき有意義でした。中身の濃い研修でした。また、能・狂言の演目を間近に拝見でき、またこのように実習も交えて体験でき感謝でした。このような充実した学びをしたいと思います。
  • 今まで多数の研修を受けてきたが、今日のものは、今後に本当に役立つ、楽しく、心底のめりこんで受講できた。
  • ガイド自身が体や手を動かし、また英語のネイティブの英語で、非常に有意義でした。これなら自信をもってガイドできるようになり、国益につながります。